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ヤフー、「無料革命」の正体 敵は楽天にあらず



 孫正義ヤフー会長が「革命」と銘打った電子商取引(eコマース=EC)モールの出店料・手数料の無料化が、インターネット業界を揺るがしている。ターゲットはECモール国内最大手の楽天とされるが、ヤフーの狙いを単なる「楽天つぶし」と考えては、その本質を見誤る。当の楽天も静観の構えだ。敵はほかにいる。孫氏が久々に打った大ばくちの背景を探った。

 「はっきり言って、影響はまったくないですね。動揺もない。(新規出店が減った、退店が増えたなど)数字面でも影響は皆無。今、楽天は絶好調ですからね。まぁ、あんまり分析もしてないっていうか。ヤフーさんはどうするんでしょうね……」

 10月18日、楽天の三木谷浩史社長は、ヤフーが打ち出したECモールの無料化策の影響についてこう語った。ECモール国内最大手である楽天は最も影響が大きいとみられていたが、当事者は意外なほどあっけらかんとしていた。

 “革命”は10月7日に公表された。ECモール「ヤフーショッピング」の出店者を招いて開催した「ヤフージャパン ストアカンファレンス 2013」。冒頭、珍しく孫正義氏がヤフー会長として登壇し、巧みなプレゼンテーションで聴衆を引きつけた。

■「楽天つぶし」を想起させるプレゼン

 「有力者は古代ローマの時代から、多額の地代を得ていた」「今日現在はどうか。eコマースの場でも地代を払っている」「自由なインターネットの中でeコマースだけは不自由な環境にあった」――。居並ぶ出店者たちは不遇な「小作人」との意識を植え付けられた。

 そして「領主」は反省を口にする。「ヤフージャパンはこれまで間違っていた。大いに反省し、根底からひっくり返そうと思い至りました」。直後、無料化策が明かされた。

 これまでヤフーショッピングの出店者から徴収していた2万1000円の初期費用、2万5000円の月額出店料、売り上げに応じたロイヤルティー(手数料、1.7~6%)を無料に。さらにネットオークション「ヤフオク」への法人月額出店料、出品手数料も無料とし、ヤフーショッピングの店舗から顧客へのメール送信、外部リンクも自由に開放する、とたたみかけた。

 「我々は日本のeコマースの新たな夜明けを迎えるんだ、革命を起こすんだ」

 孫氏の演説に思わず声を上げ喜び、拍手をおくる会場の出店者。出店料、手数料という「地代」を払っていた出店者の中には、楽天を頂点とするECモールの運営会社が強欲な地主のように映った者もいただろう。

 そして、そこにいた誰もが、ヤフーが楽天を本気でつぶしにかかった、と思い込んだ。

 断っておくが、孫氏も、その後の説明会に臨んだ宮坂学ヤフー社長兼CEO(最高経営責任者)らヤフー幹部も、一度も「楽天」を革命の敵として名指ししていない。それでも聴衆には「楽天との全面対決」の印象を与えた。なぜなら孫氏が「楽天超え」を宣言したからだ。

■「売り手の数が増えれば品物が増え、買い手が増える」

 商品数、サイトを通じて販売された総額を示す流通総額ともに、国内ECモール首位は楽天が堅持している。12年の「楽天市場」の流通総額は約1兆3000億円(推定)。アマゾンが背後に迫るが、12年の流通総額約9000億円(同)のうち7000億円超が「直販」で、モールとしては弱い。

 13年4~6月期で比較すると、楽天の流通総額は前年同期比17.1%増の4130億円(楽天市場のほか、ダウンロード、チケットなどの直販も含む)。対してヤフーショッピングは同1.4%減の735億円。ヤフオクの1733億円と合算しても楽天に及ばない。

 ヤフー減速の中、楽天の勢いはさらに増している。今年9月、楽天の1カ月の流通総額は球団の優勝セールが寄与して同42%増となる1426億円を記録。この状況下で、ヤフーはこう公約した。


出店者らと記念撮影するヤフーの孫会長(右)と宮坂社長(7日、東京都港区)
 「201X年度までに商品数ナンバーワン、流通総額ナンバーワン」――。無料化策発表の後、スクリーンにはそう映し出され、孫氏は念押しした。「我々が言うからにはそれなりの決意と腹づもりがある」

 宮坂社長が説明した青写真はこうだ。

 「(無料化で)売り手が増えれば品物が増える。品物が増えれば、買い手が増える。買い手が増えれば、また売り手が増えるという循環が始まり、まわりまわって流通総額を作る」。この好循環で流通総額を飛躍的に拡大させ、最終的には各店舗向けの広告販売を伸ばすなどして利益貢献させると説明した。損して得をとる戦略だ。

 「わずか1日で『ヤフーショッピング』の新規ストア出店希望数は通常の数百倍となる約1万件を達成、新たに受付を開始した『個人』の出店希望数は約1万6000件にものぼりました」。無料化策発表の翌8日にヤフーが公表したリリースも、競争激化のムードに拍車をかけた。

■競争激化の懸念、吹き飛んだ時価総額

 ヤフーへの新規出店が可能となるのは一部を除き今年12月から。リリースにある「出店希望数」のほとんどは詳細をメールで知らせてもらう「資料請求」の数なのだが、ともかくメディアは「無料化で出店希望殺到」「宿敵・楽天との競争激化が予想される」とあおり、株式市場も荒れた。

 楽天株はヤフーの発表以降、売られ続け、週末までに3700億円以上もの時価総額が失われた。同時にヤフー株も急降下。市場は競争激化に加え、「半期で最大70億円減」という目先の減収効果を嫌った。

 だが、ヤフー・楽天の全面対決、という見方には疑問符がつく。無料化策が即座に楽天の出店者や顧客、流通総額を奪うとは考えにくいからだ。楽天にも、対決姿勢はまるでない。

 「ヤフーが無料化したからといって、繁盛店が楽天での販売をやめる理由がない。楽天の戦略はいっさい変えないし、出店料も手数料も引き下げるつもりはまったくない」

 楽天市場を統括する高橋理人(まさと)常務執行役員は、「影響は皆無」と言い切った三木谷社長を補足し、続ける。


「影響は皆無。動揺もない」。ヤフーのECサイト出店無料化に動じない姿勢を見せる楽天の三木谷浩史社長
 「すでに楽天の約4万1000店中、約8500店がヤフーにも重複出店しているが、楽天の店舗は同じ事業者の『ヤフー支店』より概ね3~4倍の売上高がある」「楽天は『ECC』と呼ばれるコンサルタントを500人抱え、出店者と二人三脚で売り上げを伸ばす努力を日々続けている。出店料や手数料を安いと感じている店舗も多い」

■「タダほど高いものはない」

 楽天市場に出店するには初期費用に加え、1万9500~10万円の月額費用と、売り上げに応じた手数料(2~6.5%)がかかる。ヤフーは無料にしたが、楽天は出店者の売り上げを伸ばすサービスへの「対価」だと捉えている。確かに年商数千万円規模が中心の楽天出店者にとって、年間数十万円の出店料と数%の手数料は、年商を捨てるほど重たい負担ではないだろう。

 加えて、ヤフーの無料化は必ずしも出店者に福音をもたらすわけではない。「無料に引かれた店舗がヤフーに急増すれば、既存店舗は埋没し、収益力は低下する」と懸念する出店者もいる。埋没すれば「広告」で目立つしかない。ヤフーも広告売り上げでコストを回収していく方針。結局、多額の広告費用がかかり、「タダほど高いものはない」となりかねない。

 ネット通販のユーザー、顧客にとっても楽天を見限る理由はない。無料化策はあくまで出店者側への施策。ヤフーでの販売価格が楽天より大幅に安くなれば別だが、前述のとおり、無料化で浮いた経費を価格に反映できる店舗がどれだけ出てくるかは不透明だ。

 さらに、ヤフーショッピングの店舗数と商品点数が一気に増えれば、目的の商品を探しづらくなり、ユーザーにとって不便になる可能性もある。この点についてヤフーの宮坂社長は「人間が認知できる商品量には変化はないので、ギャップを検索やリコメンドなどのテクノロジーで埋めないといけない」と認めている。具体策は「これから頑張ります」という感じだ。

■一足先に始まっていた新興ECモールの無料革命

 つまり、今回の無料化策を「対楽天」と捉えると解せない点が多い。では無料化に踏み切った本当の理由は何なのか。

 1つは、ヤフーは劣勢を余儀なくされている楽天との直接対決を避け、台頭してきた新たな脅威に対応した。そうせざるを得ない事情があった、と考えるのが自然だろう。

 じつはECモールの「無料」という革命は一足早く始まっている。

 昨年から出店料・手数料完全無料の「新興ECモール」が急速に勢力を拡大している。

 昨年9月開始の「STORES.jp」は約半年で2万5000店を集め、現在は5万店を超える。昨年12月開始の「BASE」も同じく5万店超。店舗数だけでいえば、ともに楽天を凌駕(りょうが)する。だが、楽天にとって競合するようなものではない。


無料で出店できる新興ECモール「STORES.jp」は1年で5万店の出店を集めた
 これら新興モールは、単に販売システムをタダで貸すシンプルなもので、誰でも気軽かつ簡単に利用できるのが売りだが、楽天市場のような集客を担うポータル(玄関)もなければ、販売手法を指導する要員もいない。年間の流通総額はまだ数億円規模。手作り品を販売するなど主に個人事業主に広がっており、1店舗あたりの売り上げは極めて少ない。

■「一番恐ろしい目に遭うのはヤフオク」

 楽天関係者によると、「(楽天では)年商も小さく、コンサルタントの指導も聞き入れてもらえないような店舗は退店やむなしとしている」。一方、ヤフーショッピングはこれまで、個人で出店できなかった。新興モールは、これら既存ECモールが対象外とする個人や零細を集めたというわけだ。

 ただし、ヤフーにとっては問題だ。

 「個人が気軽に利用できる、オークションスタイルではない新たなスタイルのECモールが広がっている。この方向性で一番恐ろしい目に遭うのはヤフオク。ヤフーはここを守ろうとしているのではないか」。ある楽天幹部は、こう話す。

 誰でも手軽に販売できる新興モールには個人と企業の差がない。「CtoC(個人間のEC)」の新たな担い手ともいえ、その利用形態は個人と企業の売り手が混在するヤフオクに近い。いわば、固定金額で販売できるヤフオク。ヤフーにとってヤフオクは、国内のCtoC市場をほぼ寡占してきた金城湯池だけに、新興モールの広がりは好ましくない。

 今のところ、ヤフオクの集客力もオークション形式の需要も依然として高く、新興モールの取引規模はヤフオクに打撃を与えるほどのものではない。ただ、ヤフオクの取扱高は昨年7~9月期から3四半期連続で対前年度比マイナスとなっており、伸び悩んでいたのも事実だ。

 もう1つ、ヤフオクにとって不気味な存在が迫りつつある。スマートフォン向けアプリ「LINE」が今秋に開始するとしている「LINEモール」である。

■ヤフオクに迫る「LINEモール」

 世界約2億6000万人、国内約5000万人のユーザーを抱えるLINE(東京・渋谷)は今年8月、EC市場への参入を公表した。これまで同社が明らかにした情報は極めて限定的だ。「LINEを通じた新しいショッピング体験」「いつでもどこでも誰もが売り手と買い手になれる」「法人に閉じるものでも個人に閉じるものでもない」「リリースは今秋」……。

 複数の証券アナリストは「ヤフオクに近いサービスなのではないか」と予測する。詳細は不明だが、出品など基本的な利用料は無料で、数%の決済手数料がかかるとみられる。企業と個人出品者が混在する新興モールに近い形態のサービスになる可能性が高い。

 国内だけで約5000万人もいるLINEユーザーのすべてが売り手にも買い手にもなれる新たなサービスは、ヤフーがCtoCから得る利益に少なからず影響を与えるだろう。

 孫正義ヤフー会長が「革命」と銘打った電子商取引(eコマース=EC)モールの出店料・手数料の無料化が、インターネット業界を揺るがしている。ターゲットはECモール国内最大手の楽天とされるが、ヤフーの狙いを単なる「楽天つぶし」と考えては、その本質を見誤る。当の楽天も静観の構えだ。敵はほかにいる。孫氏が久々に打った大ばくちの背景を探った。

 「はっきり言って、影響はまったくないですね。動揺もない。(新規出店が減った、退店が増えたなど)数字面でも影響は皆無。今、楽天は絶好調ですからね。まぁ、あんまり分析もしてないっていうか。ヤフーさんはどうするんでしょうね……」

 10月18日、楽天の三木谷浩史社長は、ヤフーが打ち出したECモールの無料化策の影響についてこう語った。ECモール国内最大手である楽天は最も影響が大きいとみられていたが、当事者は意外なほどあっけらかんとしていた。


ECモールの出店料無料化を発表するヤフーの孫会長(7日、東京都港区)
 “革命”は10月7日に公表された。ECモール「ヤフーショッピング」の出店者を招いて開催した「ヤフージャパン ストアカンファレンス 2013」。冒頭、珍しく孫正義氏がヤフー会長として登壇し、巧みなプレゼンテーションで聴衆を引きつけた。

■「楽天つぶし」を想起させるプレゼン

 「有力者は古代ローマの時代から、多額の地代を得ていた」「今日現在はどうか。eコマースの場でも地代を払っている」「自由なインターネットの中でeコマースだけは不自由な環境にあった」――。居並ぶ出店者たちは不遇な「小作人」との意識を植え付けられた。

 そして「領主」は反省を口にする。「ヤフージャパンはこれまで間違っていた。大いに反省し、根底からひっくり返そうと思い至りました」。直後、無料化策が明かされた。

 これまでヤフーショッピングの出店者から徴収していた2万1000円の初期費用、2万5000円の月額出店料、売り上げに応じたロイヤルティー(手数料、1.7~6%)を無料に。さらにネットオークション「ヤフオク」への法人月額出店料、出品手数料も無料とし、ヤフーショッピングの店舗から顧客へのメール送信、外部リンクも自由に開放する、とたたみかけた。

 「我々は日本のeコマースの新たな夜明けを迎えるんだ、革命を起こすんだ」

 孫氏の演説に思わず声を上げ喜び、拍手をおくる会場の出店者。出店料、手数料という「地代」を払っていた出店者の中には、楽天を頂点とするECモールの運営会社が強欲な地主のように映った者もいただろう。

 そして、そこにいた誰もが、ヤフーが楽天を本気でつぶしにかかった、と思い込んだ。

 断っておくが、孫氏も、その後の説明会に臨んだ宮坂学ヤフー社長兼CEO(最高経営責任者)らヤフー幹部も、一度も「楽天」を革命の敵として名指ししていない。それでも聴衆には「楽天との全面対決」の印象を与えた。なぜなら孫氏が「楽天超え」を宣言したからだ。

■「売り手の数が増えれば品物が増え、買い手が増える」

 商品数、サイトを通じて販売された総額を示す流通総額ともに、国内ECモール首位は楽天が堅持している。12年の「楽天市場」の流通総額は約1兆3000億円(推定)。アマゾンが背後に迫るが、12年の流通総額約9000億円(同)のうち7000億円超が「直販」で、モールとしては弱い。

 13年4~6月期で比較すると、楽天の流通総額は前年同期比17.1%増の4130億円(楽天市場のほか、ダウンロード、チケットなどの直販も含む)。対してヤフーショッピングは同1.4%減の735億円。ヤフオクの1733億円と合算しても楽天に及ばない。

 ヤフー減速の中、楽天の勢いはさらに増している。今年9月、楽天の1カ月の流通総額は球団の優勝セールが寄与して同42%増となる1426億円を記録。この状況下で、ヤフーはこう公約した。


出店者らと記念撮影するヤフーの孫会長(右)と宮坂社長(7日、東京都港区)
 「201X年度までに商品数ナンバーワン、流通総額ナンバーワン」――。無料化策発表の後、スクリーンにはそう映し出され、孫氏は念押しした。「我々が言うからにはそれなりの決意と腹づもりがある」

 宮坂社長が説明した青写真はこうだ。

 「(無料化で)売り手が増えれば品物が増える。品物が増えれば、買い手が増える。買い手が増えれば、また売り手が増えるという循環が始まり、まわりまわって流通総額を作る」。この好循環で流通総額を飛躍的に拡大させ、最終的には各店舗向けの広告販売を伸ばすなどして利益貢献させると説明した。損して得をとる戦略だ。

 「わずか1日で『ヤフーショッピング』の新規ストア出店希望数は通常の数百倍となる約1万件を達成、新たに受付を開始した『個人』の出店希望数は約1万6000件にものぼりました」。無料化策発表の翌8日にヤフーが公表したリリースも、競争激化のムードに拍車をかけた。

■競争激化の懸念、吹き飛んだ時価総額

 ヤフーへの新規出店が可能となるのは一部を除き今年12月から。リリースにある「出店希望数」のほとんどは詳細をメールで知らせてもらう「資料請求」の数なのだが、ともかくメディアは「無料化で出店希望殺到」「宿敵・楽天との競争激化が予想される」とあおり、株式市場も荒れた。

 楽天株はヤフーの発表以降、売られ続け、週末までに3700億円以上もの時価総額が失われた。同時にヤフー株も急降下。市場は競争激化に加え、「半期で最大70億円減」という目先の減収効果を嫌った。

 だが、ヤフー・楽天の全面対決、という見方には疑問符がつく。無料化策が即座に楽天の出店者や顧客、流通総額を奪うとは考えにくいからだ。楽天にも、対決姿勢はまるでない。

 「ヤフーが無料化したからといって、繁盛店が楽天での販売をやめる理由がない。楽天の戦略はいっさい変えないし、出店料も手数料も引き下げるつもりはまったくない」

 楽天市場を統括する高橋理人(まさと)常務執行役員は、「影響は皆無」と言い切った三木谷社長を補足し、続ける。


「影響は皆無。動揺もない」。ヤフーのECサイト出店無料化に動じない姿勢を見せる楽天の三木谷浩史社長
 「すでに楽天の約4万1000店中、約8500店がヤフーにも重複出店しているが、楽天の店舗は同じ事業者の『ヤフー支店』より概ね3~4倍の売上高がある」「楽天は『ECC』と呼ばれるコンサルタントを500人抱え、出店者と二人三脚で売り上げを伸ばす努力を日々続けている。出店料や手数料を安いと感じている店舗も多い」

■「タダほど高いものはない」

 楽天市場に出店するには初期費用に加え、1万9500~10万円の月額費用と、売り上げに応じた手数料(2~6.5%)がかかる。ヤフーは無料にしたが、楽天は出店者の売り上げを伸ばすサービスへの「対価」だと捉えている。確かに年商数千万円規模が中心の楽天出店者にとって、年間数十万円の出店料と数%の手数料は、年商を捨てるほど重たい負担ではないだろう。

 加えて、ヤフーの無料化は必ずしも出店者に福音をもたらすわけではない。「無料に引かれた店舗がヤフーに急増すれば、既存店舗は埋没し、収益力は低下する」と懸念する出店者もいる。埋没すれば「広告」で目立つしかない。ヤフーも広告売り上げでコストを回収していく方針。結局、多額の広告費用がかかり、「タダほど高いものはない」となりかねない。

 ネット通販のユーザー、顧客にとっても楽天を見限る理由はない。無料化策はあくまで出店者側への施策。ヤフーでの販売価格が楽天より大幅に安くなれば別だが、前述のとおり、無料化で浮いた経費を価格に反映できる店舗がどれだけ出てくるかは不透明だ。

 さらに、ヤフーショッピングの店舗数と商品点数が一気に増えれば、目的の商品を探しづらくなり、ユーザーにとって不便になる可能性もある。この点についてヤフーの宮坂社長は「人間が認知できる商品量には変化はないので、ギャップを検索やリコメンドなどのテクノロジーで埋めないといけない」と認めている。具体策は「これから頑張ります」という感じだ。

■一足先に始まっていた新興ECモールの無料革命

 つまり、今回の無料化策を「対楽天」と捉えると解せない点が多い。では無料化に踏み切った本当の理由は何なのか。

 1つは、ヤフーは劣勢を余儀なくされている楽天との直接対決を避け、台頭してきた新たな脅威に対応した。そうせざるを得ない事情があった、と考えるのが自然だろう。

 じつはECモールの「無料」という革命は一足早く始まっている。

 昨年から出店料・手数料完全無料の「新興ECモール」が急速に勢力を拡大している。

 昨年9月開始の「STORES.jp」は約半年で2万5000店を集め、現在は5万店を超える。昨年12月開始の「BASE」も同じく5万店超。店舗数だけでいえば、ともに楽天を凌駕(りょうが)する。だが、楽天にとって競合するようなものではない。


無料で出店できる新興ECモール「STORES.jp」は1年で5万店の出店を集めた
 これら新興モールは、単に販売システムをタダで貸すシンプルなもので、誰でも気軽かつ簡単に利用できるのが売りだが、楽天市場のような集客を担うポータル(玄関)もなければ、販売手法を指導する要員もいない。年間の流通総額はまだ数億円規模。手作り品を販売するなど主に個人事業主に広がっており、1店舗あたりの売り上げは極めて少ない。

■「一番恐ろしい目に遭うのはヤフオク」

 楽天関係者によると、「(楽天では)年商も小さく、コンサルタントの指導も聞き入れてもらえないような店舗は退店やむなしとしている」。一方、ヤフーショッピングはこれまで、個人で出店できなかった。新興モールは、これら既存ECモールが対象外とする個人や零細を集めたというわけだ。

 ただし、ヤフーにとっては問題だ。

 「個人が気軽に利用できる、オークションスタイルではない新たなスタイルのECモールが広がっている。この方向性で一番恐ろしい目に遭うのはヤフオク。ヤフーはここを守ろうとしているのではないか」。ある楽天幹部は、こう話す。

 誰でも手軽に販売できる新興モールには個人と企業の差がない。「CtoC(個人間のEC)」の新たな担い手ともいえ、その利用形態は個人と企業の売り手が混在するヤフオクに近い。いわば、固定金額で販売できるヤフオク。ヤフーにとってヤフオクは、国内のCtoC市場をほぼ寡占してきた金城湯池だけに、新興モールの広がりは好ましくない。

 今のところ、ヤフオクの集客力もオークション形式の需要も依然として高く、新興モールの取引規模はヤフオクに打撃を与えるほどのものではない。ただ、ヤフオクの取扱高は昨年7~9月期から3四半期連続で対前年度比マイナスとなっており、伸び悩んでいたのも事実だ。

 もう1つ、ヤフオクにとって不気味な存在が迫りつつある。スマートフォン向けアプリ「LINE」が今秋に開始するとしている「LINEモール」である。

■ヤフオクに迫る「LINEモール」

 世界約2億6000万人、国内約5000万人のユーザーを抱えるLINE(東京・渋谷)は今年8月、EC市場への参入を公表した。これまで同社が明らかにした情報は極めて限定的だ。「LINEを通じた新しいショッピング体験」「いつでもどこでも誰もが売り手と買い手になれる」「法人に閉じるものでも個人に閉じるものでもない」「リリースは今秋」……。

 複数の証券アナリストは「ヤフオクに近いサービスなのではないか」と予測する。詳細は不明だが、出品など基本的な利用料は無料で、数%の決済手数料がかかるとみられる。企業と個人出品者が混在する新興モールに近い形態のサービスになる可能性が高い。

 国内だけで約5000万人もいるLINEユーザーのすべてが売り手にも買い手にもなれる新たなサービスは、ヤフーがCtoCから得る利益に少なからず影響を与えるだろう。


スマートフォン向け無料通話・メッセンジャーアプリ「LINE(ライン)」は今秋、EC事業に乗り出す
 じつは、ヤフーは個人向けの新興モールで失敗している。昨年10月、個人が固定価格で商品を売買できる「ヤフーバザール」を立ち上げたが、今年5月に“爆速”で閉じた。「ヤフオクより簡単に出品でき、ヤフーショッピングと同じ感覚で購入できる」ことが売りだったが、出品数が伸び悩み、わずか8カ月で終了した。

 だからこそ、LINEの動きは不気味であると同時に、孫氏らヤフー経営陣の焦りをかき立てたに違いない。

■既存ECモールとはルールが異なる新興モール

 戦略の立て直しを迫られたヤフー。結果、ヤフーショッピングを個人にも開放し、無料化することで、新興モールやLINEモールに対応。ついでにヤフオクも法人出店料などを無料にして強化し、ヤフーとしてCtoCのシェアを守ろうとした。そう考えれば、突然の戦略転換も腑(ふ)に落ちる。

 だが、無料化で店舗数が飛躍的に増えたとしても、比例してヤフーショッピングの流通総額が増えるわけではない。何より、新興モールもLINEも「流通総額日本一」など狙っていない。

 新興モールは、従来のECモールとはまったく異なったマネタイズ(収益化)や競争のルールで勢力を拡大している。無料で大量の出店者を集め、その一部から、商品の梱包・発送代行、クーポンなどを発行するマーケティング機能といった有償の周辺サービスで儲ける「フリーミアム」モデルだ。

 LINEに至っては本業はあくまで「メッセンジャー」。その周辺に無料通話やスタンプ、ゲームなどのサービスを拡充させてきた。LINEモールもメッセンジャーとしての地位を強固にする付随サービスの1つで、既存ECモールとはルールが異なる。

 それでも孫氏が自信ありげに日本一奪取を宣言したのには、からくりがある。ヤフーもまた、新たなルールを見つけたのだ。これが無料化策を進める2つ目の理由である。

■「ヤフーは『ゲームチェンジ』を図った」

 「ヤフーは楽天との直接対決から逃れ、『ゲームチェンジ』を図った。EC事業そのものから、日本のEC全体への送客を担う広告事業に舵(かじ)を切ったと見るべきだ」。ネット業界に詳しいバークレイズ証券の米島慶一アナリストは、こう指摘する。

 言い換えれば、ヤフーは自前モールの流通総額を競うゲームを諦め、勝負の土俵を変えたということ。それは、楽天ともアマゾンとも、LINEともぶつからない土俵である。

 ヤフーは今回、無料化と同時に、外部のECサイトへのリンクを自由とした。ということは、出店者はヤフーショッピングに自社の全商品を掲載し、実際の販売は楽天や自前ECサイトにリンクで飛ばすことも可能になる。ヤフーショッピングでは「見せる」だけになるが、ヤフーにとっては、売り上げに応じて手に入る手数料を手放したのだから、販売の場所がどこだろうがかまわない。

 他方、新興モールにはポータルや集客機能がない。LINEモールも、LINE上の自分の友だちに通知できても、広く世間に知らせることはできないだろう。集客をしたいと考える個人事業主にとって、無料でリンクフリーのヤフーショッピングは格好の「見せ場」となるはずだ。

■EC全体の「ディレクトリ」や「比較サイト」のような存在に

 もちろん、集客ポータルとして利用するうちに、販売行為をヤフーショッピングに一本化するEC事業者も現れるかもしれない。それはそれでよい。とにかく、日本中のEC事業者にタダでどんどん商品を掲載してもらえれば、ヤフーショッピングは日本のEC全体の商品情報が詰まった「ディレクトリ」や「比較サイト」のような存在になれる。

 目論見通り事が運べば、買い物をしたいユーザーはまずヤフーで検索するようになり、ヤフーショッピングのメディア価値も高まる。そうなれば、ヤフーの広告サービスを利用してヤフー支店の集客を高めたいと考えるEC事業者も増え、ヤフーは日本中の買い物の入口として、彼らの広告需要を一手に引き受けることができるかもしれない。これがヤフーが描く未来図であり、革命の正体だ。

 結果として、ヤフーが“関連”した流通総額は飛躍的に増える。前出の米島アナリストはこう解説する。「最終的にモノがどこで売れようと、送客すればヤフーが流通総額を作ったといえる。実際、(中国EC大手の)淘宝網(タオバオ)は送客効果を含めて流通総額にカウントしている。ヤフーは『自前のモールで流通総額1位をとる』とは言っていない」

 別の証券アナリストはヤフーをこう讃える。「本当のことは言ってないが、ウソも言ってない。うまいのは、楽天が成功しているビジネス領域から撤退する、ヤフオクを新興勢力から守る、というネガティブな印象を一切与えず、世間に『楽天つぶし』と勘違いさせたこと」

■新たな敵はグーグル

 実際は、ヤフーは今後、楽天とはまったく違う道をゆくことになる。新たな敵はネット検索・広告の世界最大手、グーグルだ。

 すでに、多くの国内EC事業者がグーグルにリスティング(検索連動型)広告を出している。EC事業者の商品販売ページへユーザーを誘導する「グーグルショッピング」の活用も進みつつある。今年6月からグーグルショッピングへの商品登録は完全に有料となり、登録には広告出稿が必須となった。キーワードを高値で買ったEC事業者への商品リンクが、ユーザーの検索結果に優先的に表示される。ヤフーショッピングはこれに、「登録無料」「広告出稿は任意」で挑むことになる。

 孫氏は新たな照準を、グーグルという巨人に合わせた。しばらくインフラ事業で大ばくちを打っていた孫氏が、ネット領域でも大きな賭けに出たといえる。その選択が吉と出るか凶と出るかは分からない。ただ、国内ECモールの争いに巻き込まれず、グーグルにはない自前のEC事業を活用した独自の広告戦略を打ち出せることは強みだ。やはり孫氏が「策士」であることに違いはない。


(日経新聞 電子報道部)












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