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遠隔診療、事実上解禁 「ソーシャルホスピタル」へ前進
 離れた場所にいる医師と患者を情報通信機器でつないで行う「遠隔診療」。これまでは「原則禁止」と認識され、活用が進んでこなかったが、その状況が変わりそうだ。きっかけは厚生労働省が出した1本の通達。政府が遠隔診療を推進することは、社会全体が医療の担い手となる「ソーシャルホスピタル」の実現とも深く関わる

 東京都心で働くビジネスパースンなどを対象に内科診療を行っているお茶の水内科 院長の五十嵐健祐氏は2015年夏のある日、医療関係の知人や法律の専門家と熱のこもった議論を交わしていた。

 テーマは、同年8月10日に厚生労働省(厚労省)が各都道府県知事宛てに出した1本の通達である。「臨床医の立場から、この通達をどう解釈したらよいか」─―。議論は長時間、尽きなかった。

■事実上の「解禁」

 議論の対象となった通達は、互いに離れた場所にいる医師と患者を情報通信機器でつないで行う診療、いわゆる「遠隔診療」に関するもの。同省が過去の通知で示した遠隔診療の適用範囲を、必要以上に狭く解釈しなくてよいことを強調する内容だった。

 これまで遠隔診療は、離島や僻(へき)地の患者を診察する場合など、対面診療が物理的に難しいケースを除いて「原則禁止」と捉える医療従事者が多かった。患者との対面診療を原則とする医師法第20条への抵触などを恐れてきたためだ。

 遠隔画像診断のように、医師同士をつなぐ「Doctor to Doctor(DtoD)」の領域では遠隔医療の活用が比較的進んでいるのに対し、「Doctor to Patient(DtoP)」の領域での活用が遅れてきた理由がここにある。

 今回の通達では、厚労省が遠隔診療を事実上解禁─―。関係者の多くがそう受け取った(図1)。心電や呼吸状態などを計測できるウエアラブルセンサーを手掛ける米Vital Connectの大川雅之氏(Vice President and General Manager, Japan)は、今回の通達は「遠隔診療に関心を持つ者にとっては大きなインパクトがあった」と話す。


図1 潮目が変わる

 社会や医療現場からの要請(ニーズ)、それに応える技術(シーズ)の両面からも、遠隔診療の活用が期待される場面は確実に増えている。変わり始めた遠隔診療の潮目。それを読み解く上で、まずは今回の通達の中身を見ていこう。

■事前の対面診療は前提にあらず

 厚労省が8月10日に出した通達は、同省が1997年(平成9年)に出し、2003年と2011年にその一部を改正した「平成9年遠隔診療通知」をベースとするものである。

 平成9年の通知で厚労省は、遠隔診療に対する「基本的考え方」を示した。診療は医師と患者が「直接対面して行われることが基本であり、遠隔診療はあくまで直接の対面診療を補完するものとして行うべき」というものだ。医師法第20条を踏まえた内容である。

 ただし、直接の対面診療と「同等ではないにしてもこれに代替し得る程度の患者の心身の状況に関する有用な情報が得られる場合には、遠隔診療を行うことは直ちに医師法第20条等に抵触するものではない」と注釈をつけた。そしていくつかの「留意事項」を示し、遠隔診療の適用が認められる場面を具体的に挙げた。

 例えば、「在宅糖尿病患者」を対象に、「テレビ電話等情報通信機器を通して、血糖値等の観察を行い、糖尿病の療養上必要な継続的助言・指導を行うこと」といった内容である。

 この通知を多くの医療従事者は、遠隔診療はあくまでも「原則禁止」であり、厚労省が挙げた事例でのみ例外的に許されると解釈してきた。厚労省の事例をいわば“ホワイトリスト”と見なしてきた。

 これに対し今回の通達では、平成9年遠隔診療通知の「基本的考え方」や「留意事項」で挙げた事例を必要以上に狭く解釈しなくても良いことを強調した。明確化したのは次の3点だ(図2)。


図2  事実上の「解禁」

 第1に、平成9年遠隔診療通知の留意事項において、「直接の対面診療を行うことが困難である場合」として「離島、へき地の患者」を挙げたが、これは「例示」だとした。すなわち、遠隔診療の対象を離島やへき地の患者に限る必要がないことを明確にした。

 第2に、平成9年遠隔診療通知の留意事項において、遠隔診療の対象と内容を「別表」で示したが、これは「例示」だとした。すなわち、別表に示した対象(在宅糖尿病患者など9種類)以外の疾患も遠隔診療の対象になること、および別表に示した内容以外の診療も許されることを明確にした。

 第3に、平成9年遠隔診療通知では「診療は医師または歯科医師と患者が直接対面して行われることが基本」としていたが、今回は「患者側の要請に基づき、患者側の利点を十分に勘案した上で、直接の対面診療と適切に組み合わせて行われるときは、遠隔診療によっても差し支えないこととされており、直接の対面診療を行った上で、遠隔診療を行わなければならないものではない」とした。すなわち、直接の対面診療を事前に行うことが必ずしも遠隔診療の前提条件ではないことを明確にした。

■積極推進に転じた政府

政府の「規制改革実施計画」

 今回の通達の背景には、遠隔診療をめぐる方針を政府がここにきて大きく転換したことがある。参議院議員の秋野公造氏(長崎大学 客員教授)は2015年10月9~10日に仙台市で開催された「第19回 日本遠隔医療学会学術大会(JTTA 2015)」(主催:日本遠隔医療学会)で講演し、その経緯に触れた。同氏は医学博士でもあり、遠隔診療を含む医療政策に関して積極的な提言を行っている。

 秋野氏が触れたのは、2015年6月30日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2015」、いわゆる「骨太の方針2015」に、遠隔診療を含む「遠隔医療の推進」が盛り込まれたことだ。

 同方針には遠隔医療という言葉が2カ所に現れ、このうち「医療等分野のICT化の推進等」の項目ではその冒頭で「医療資源を効果的・効率的に活用するための遠隔医療の推進」がうたわれた。遠隔医療の推進が骨太の方針に明記されたのはこれが初めてだ。

 さらに、骨太の方針の具体的な実施策を示すものとして同じ日に閣議決定された「規制改革実施計画」でも、健康・医療分野に「遠隔モニタリングの推進」という項目が新たに設けられた。推進すべき事項として「有用な遠隔モニタリング技術の評価」「遠隔診療の取扱いの明確化」「遠隔診療推進のための仕組みの構築」を明記するなど、遠隔診療に関してこれまでになく「踏み込んだ表現がなされた」(秋野氏)。


「第19回 日本遠隔医療学会学術大会(JTTA 2015)」に登壇した参議院議員の秋野公造氏(長崎大学 客員教授)

 こうした政府方針にもかかわらず、過去の通知の“分かりにくさ”が遠隔診療の普及を妨げかねない─―。そう判断した厚労省が6月30日の閣議決定から間もなく出したのが、今回の通達というわけだ。遠隔診療を「止めて(禁じて)はいないのにうまくいかない」(日本遠隔医療学会 常務理事の長谷川高志氏)という、これまでの状況を打破する狙いがある。

 ただし、今回の通達だけで遠隔診療の活用が一挙に広がると見る向きは少ない。診療報酬(保険点数)制度が遠隔診療の利用を前提とした形では整備されておらず、医療機関にとっては遠隔診療を導入するメリットがまだ薄いからだ。今後、遠隔診療の推進という政府方針が診療報酬改定にどう反映されるか、多くの関係者が注目している。

■「ソーシャルホスピタル」実現にも関わる

 病気になってからの診断・治療から、未病段階での健康管理や重症化予防へ。病院でのケアから、地域や街、家庭といった日常生活の中でのケアへ―─。政府が打ち出した遠隔診療の推進はこうした、社会全体が医療の担い手となる「ソーシャルホスピタル」の実現に向けた医療のパラダイムシフトと深く関わっている。「医療資源を効果的・効率的に活用」し、医療費を削減するための仕組みづくりに、遠隔診療が重要な役割を果たすと期待されているのだ。


日経デジタルヘルスが提唱するソーシャルホスピタルの概念図

 例えば、高齢者が要介護状態となっても住み慣れた地域で生活を続けられるようにする地域包括ケアシステム。その推進は遠隔診療の推進にも「大きく影響する」(日本遠隔医療学会の長谷川氏)。離れた場所にいる医師と患者をつなぐ遠隔診療のニーズは、在宅中心のケアにおいてより高まるからだ。

 医療情報の専門家で遠隔医療への造詣も深い京都大学 教授/医学部附属病院 医療情報企画部長の黒田知宏氏はより広い視点から、遠隔診療の必要性を説く。対面診療が必ずしも必要ないと判断される患者に通院を強いることは「社会全体の労働力、すなわち生産性を低下させる」(黒田氏)。同氏は医療側のリソース確保の面からも、遠隔診療は有効とみる。

 臨床の現場に立つ医師からも遠隔診療の活用を望む声は強い。お茶の水内科の五十嵐氏もそうした医師の1人。同氏が遠隔診療の活用を訴えるのは、高血圧症やメタボリックシンドロームなど、重大な疾患につながる生活習慣病はできる限り「上流(早期)で食い止めることが大切」(五十嵐氏)だからだ。

■時間的制約からも解放される


お茶の水内科 院長の五十嵐健祐氏

 五十嵐氏のもとを訪れる患者には多忙なビジネスパースンも多く「通院する時間を持てないばかりに、治療を中断してしまう」(同氏)。結果として、薬の内服を続けさえすれば良好な状態を保てる症例でも、重症化してしまうケースがしばしばあるという。

 離島やへき地の患者のように物理的制約があるわけではないものの、こうして時間的な制約から孤立してしまう患者が都心部には多い。遠隔診療はそうした患者に手を差し伸べる手段ともなる。

■新たなエビデンス生む

 診断のエビデンスの観点からも、遠隔診療には追い風が吹き始めている。例えば、日本高血圧学会(JSH)が2014年4月に発行した「高血圧治療ガイドライン2014」(JSH2014)。医療機関で測る「診療室血圧」と家庭で測る「家庭血圧」の診断が異なる場合、家庭血圧を優先するとの内容が初めて盛り込まれた。

 病院で測る値に比べて「遠隔でモニタリングした値は“精度が落ちる”のが常識だったが、むしろ(診断材料としての)精度は高い可能性がある」(五十嵐氏)。それにお墨付きを与えた事例の1つが、同ガイドラインというわけだ。

 このほか、政府による規制改革実施計画の「有用な遠隔モニタリング技術の評価」の項目でも、睡眠時無呼吸症候群に対する治療法(CPAP療法)の遠隔モニタリングの評価を検討するとの内容が盛り込まれた。社会問題化している睡眠時無呼吸症候群についても、診断や治療方針に関する新たなエビデンスを遠隔モニタリングが生みだす可能性がある。

 現在、日常のバイタルデータに基づく予防医療的な行為には基本的に保険点数が付かない。遠隔モニタリングが生む新たなエビデンスが、その状況を変える起爆剤になると期待されている。

■遠隔診療をカジュアルに

 遠隔診療の実現手段(ツール)にも、ここ数年で劇的な変化が起こった。スマートフォンやタブレット端末などのモバイル機器が急速に普及し、ウエアラブル端末なども相次ぎ登場していることだ。

 これらのデバイスを使って、離れた場所にいる医師と患者が、患者の情報を手軽に共有できるようになった。クラウドコンピューティングや人工知能など、日常のデータを収集し解析するための情報基盤も飛躍的な進化を遂げている。

 大がかりで高価な専用のテレビ会議システムで遠隔地をつなぐ従来の遠隔診療から、身近な機器を使った“カジュアル”な遠隔診療へ。ツールの進化は、遠隔診療の姿を大きく変えようとしている。既に保険適用外の領域では、モバイル機器を使った遠隔でのモニタリングツールや健康相談サービスが相次ぎ登場している。

 スマートフォンを使って、健康に関する心配ごとを遠隔地にいる医師に気軽に相談できる─―。「ポケットドクター」と呼ぶそんなサービスを2015年12月にも始めるのが、MRTとオプティムである。


MRT 代表取締役社長の馬場稔正氏

 ポケットドクターでは、利用者がスマートフォンで相談内容を登録。あらかじめサービスにエントリーした複数の医師がそれを見て、自らが答えようと思った相談に対して休憩時間などに専用アプリから回答する仕組みだ。相談に当たっては、スマートフォンのカメラを使って患部の状況や顔色を伝え、より正確なアドバイスを受けられるようにする。

 「コンビニに行くような感覚で手軽に健康相談ができる環境を作りたい」。MRT 代表取締役社長の馬場稔正氏はサービスの狙いをこう話す。ゆくゆくは、患者側が医師を指定して行うセカンドオピニオンや、自治体向けのへき地医療など、ポケットドクターのインフラを使ったさまざまなサービスを検討していくという。

 保険の一部適用を前提とした遠隔診療サービスもいよいよ立ち上がる。メディア事業などを手掛けるポートが、お茶の水内科の五十嵐氏らと共同開発した「ポートメディカル」がそれだ。スマートフォンなどを介し、遠隔で医師と患者をつなぎ、診断、処方、医薬品の配送までを実現する日本初のサービスとなる。

■メンタルヘルスと高い親和性

 ウエアラブル端末も今後、遠隔診療において大きな役割を果たしそうだ。注目される領域の1つが、まだ「有効なバイオマーカーが存在しない」(Vital Connectの大川氏)というメンタルヘルスの領域である。


エムキューブのビジュアルコミュニケーションシステム

 Vital Connectは同社のバイタルセンサーを使い、睡眠中の心拍やその変動、体動を測ることで「うつ病などの精神疾患に特有のパターンを抽出できるのではないか」(大川氏)とみる。今後、大学の研究者やアプリ開発者などと研究を進めていく。

 企業による従業員の「ストレスチェック」が2015年12月に義務化されるなどの動きもあり、メンタルヘルスに注目するプレーヤーは多い。例えば、ウェブ/テレビ会議向けクラウドサービス大手のブイキューブとエムスリーの合弁会社であるエムキューブも2016年度をめどに、メンタルヘルスの領域で医師と患者を直接つなぐコミュニケーションシステムを開発する狙いである。

(日経デジタルヘルス)

[『日経デジタルヘルス特別編集版2015秋』の記事を再構成]









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