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ゴルフの日本3オープン、選手の魅力は引き出せたか
 今年も残り少なくなりました。今回は、日本ゴルフ協会(JGA)が主催した3つのナショナルオープン競技を総括したいと思います。

 最初は日本女子オープン(10月1~4日、片山津GC)です。私自身、女子の試合に関わるのはほぼ15年ぶり。それだけに、現在なぜ女子ゴルフに人気があるのか、とても興味がありました。実際、大会初日から大勢のギャラリーが入り、会場は華やかな雰囲気がありました。その理由を挙げるとすると、(1)世界ランキング上位者が参戦してランキングにふさわしい活躍をした(2)ギャラリー数が3オープンで最も多い3万人強(最終日は約1万2000人)(3)テレビ視聴率も最終日は日没直前までプレーオフが長引いたにもかかわらず平均10%を超えた――などに表れています。


女子はイ・ボミら若い選手を中心に華のある選手が多く、ファンサービスが行き届いている=日本ゴルフ協会提供、以下同

■女子は「お客を呼べる選手」が多く

 人気の理由は、やはり若い選手を中心に華のある選手が多く、ファンサービスが行き届いていることに尽きます。その背景には彼女たちが「自分たちはなぜこの場所にいられるのか? それは支える人たちがいるからだ」ということをわかって、それにふさわしい振る舞いをしているからだと思います。それはファンに対してだけでなく、大会主催者やボランティアスタッフ、ゴルフ場従業員、運営関係者に対しても同じです。ゴルファーの多くが男性だということを割り引いても、「これならファンもスポンサーもついてくるな」と実感しました。実際、選手にはそれぞれのファンがついていて、いわゆる「お客さんを呼べる選手」がたくさんいる感じです。

 しかし問題点も感じました。特に気になったのはプレーが遅い選手が多いことです。若い女子選手の多くが男性の帯同キャディーを使っていることが理由の一つでしょう。キャディーの多くは選手より年齢が上。このため本来なら「選手が主で、キャディーは従」という関係が逆転して、キャディーの指示に従って選手がプレーしているような場面があちこちで見られるのです。

 例えばショットの際も、飛球線後方からキャディーがアドレスの向きを確認してあげる。クラブ選択、距離の確認、パッティングラインについても自分が決めるというより「キャディーの意見を聞いて決める」というケースが目立つのです(もちろん規則上は何ら問題ないのですが)。このため、一つ一つのプレーに時間がかかってしまうのだと思います。

 プロはただボールを打つだけではないはずです。「どこに向いて、どういう球を打つか」を自分で判断できて当たり前。良く言えば「キャディーの担う役割が大きい」のですが、「キャディーに頼り過ぎ」とも言えます。これまで男子の試合を多く見てきただけに、これには少し違和感を持ちました。


日本女子オープンを制した田仁智は実に堂々としており、21歳にして風格すら感じさせる

■21歳にして風格感じさせる田仁智

 そんな中で優勝した女子大生プロ、田仁智選手(韓国)には練習日から注目していました。名門・高麗大学に籍を置く21歳なのに、実に堂々としている。ゴルフがうまいだけでなく、落ち着きがあって話し方や所作からも人柄がうかがわれ、風格すら感じられるのです。これまで多くの選手を見てきましたが、若いころからこういう雰囲気のある選手はあまりいません。強いて言えば、デビューしたころのアーニー・エルス選手(南アフリカ)やフィル・ミケルソン選手(米国)でしょうか。

 彼女のあだ名は「ダンボ」。由来は、周りで話している声が実によく聞こえるそうで、日本流に言えば「地獄耳」ですかね。それだけ冷静で、かつ処理能力が高いといえるかもしれません。

 その田選手の本領発揮という場面がプレーオフでした。先にホールアウトしていた田選手はプレーオフが決まったとき、まずキャディーに「何番ホールでやるの?」と聞いたそうです。「18番ホールの繰り返し」ということを確認すると、「18番をやるなら、8番アイアンを抜いてロフト19度のユーティリティーを入れよう」とクラブセッティングを変えてプレーに臨んだのです。最終的に勝負を決めたショットは、新たに入れたユーティリティークラブでした。彼女の帯同キャディーはベテランの英国人なのですが、「本当に頭の良い子なんだよ」とホールアウト後に話していました。

 ゴルフ規則上、プレーオフでは本戦と異なるクラブセッティングをすることは問題ありません。かつてプレーオフでセッティングを変更した例はあるのでしょうが、実際に目にしたのは初めて。しかも終盤のドタバタでプレーオフが決まり、日没が近いという状況で、冷静に18番ホール攻略に目的を絞ったセッティングを決め、それで勝負を決める――これが21歳のやることなのか、と感心しました。これからどんなゴルファーに成長していくのか楽しみです。

■スコットがジュニア向けセミナー

 次は日本オープン(10月15~18日)です。会場となった六甲国際GC東コースは青木功さんが1983年に初めて日本オープンを制した思い出の場所です。その青木さんが歴代優勝者のそろう夕食会にわざわざ来て、翌日は自身の思い出を織り込みながらテレビ解説をやってくれました。米ツアーでは歴代優勝者を大切にして、出場資格がなくても大会に招待するケースがよくあります。青木さんがいるだけで、伝統と格式が備わり会場の雰囲気は変わります。今後大会を盛り上げていく上で、こうした取り組みも考えていかなければならないと感じました。


スコットは日本オープンに2年連続参戦、ジュニアゴルファーを招いてセミナーも開いた

 もう一つは、昨年に続いてアダム・スコット選手(オーストラリア)が参戦してくれたことです。前週に韓国で開かれたプレジデンツ・カップから直接会場に来たのですが、「今回は日本オープンに勝ちにきた」という気持ちがはっきりとわかりました。というのは、エースキャディーのスティーブ・ウィリアムズさんをわざわざニュージーランドから呼び寄せ、コーチやトレーナー、マネジャーまで連れてきたのです。

 さらにうれしかったのは、「出場するからには、日本の若いゴルファーに自分なりに貢献したい」と言ってくれたことです。そこで大会前々日の火曜日の夕方に全国からジュニアゴルファーを招いて、彼が自分の経験や考え方を話すセミナーを開いてくれました。参加者の中には、日本女子オープンで優勝争いをした柏原明日架選手(ナショナルチーム出身)や、日本オープンでローアマを取った金谷拓実選手もいました。

 スコット選手は「『ゴルフができるのは誰のおかげなのか』いつも考えて行動することが大切」という心構えの重要性を説きながら、自分がプロになったきっかけやこれからの目標、さらにスポンサーとの関係や、自らの失敗談など、あまり知られていないエピソードも紹介してくれました。将来プロを目指すジュニアにとっては、とても参考になる話だったと思います。


日本オープンは小平が優勝。池田と最後まで争い、ナショナルオープンにふさわしい熱戦となった

 また、「全国、特に被災した地域に住むジュニアゴルファーのために役立ててほしい」と、昨年に続いて賞金全額(520万円)をチャリティーしてくれました。試合のほうも、小平智選手と池田勇太選手の優勝争いが最終ホールにまでもつれ込み、ナショナルオープンにふさわしい熱戦でした。

■日本オープン、二大看板選手が欠場

 一方で反省点もあります。思ったようなコースコンディションが整えられなかった点です。特に夏場、ラフが思ったほど伸びなかったのは誤算でした。さらに大会前に雨が降り、グリーンが止まりやすくなったのです。このため2日目に62という爆発的なスコアが出て、優勝スコアも13アンダーという近年にない数字になりました。これについては「ナショナルオープンとしていかがなものか」というお叱りも受けました。

 よく「ナショナルオープンはスコアが伸びないように、深いラフや硬いグリーンなど難しいセッティングをしている」と言われます。もちろんある程度の予想はしながらセッティングしますが、優勝スコアを○○アンダー以下にしようというのではなく、あくまで「ミスショットと良いショットの差がつくフェアな設定」というのが私たちJGAの基本的な考え方です。

 あのラフの深さとグリーンの軟らかさでも、1桁アンダーしか出ないようにすることはできたかもしれません。でもそのためにはピンの位置をアンフェアといえる場所に切るしかありません。誰がどんなに良いショットを打っても絶対寄らないような場所です。ここまでいくと「難しい」を超えて「いじめ」のセッティングになってしまいます。こんな条件ではプレーする側も、見る側も楽しめるゲームにはなりません。

 今年のコースコンディションなら、あのスコアは予想範囲内でした。しかも中堅の域に入りつつある池田選手と、伸び盛りの小平選手というこれから日本のゴルフシーンを担っていく2人のデッドヒートはナショナルオープンにふさわしいものだったと思います。

 これに関連して「松山英樹、石川遼という二大看板選手が日本オープンに出ないのはけしからん」という意見についても、一言申し上げておきたいと思います。

 確かに興行面から考えれば、この2選手には出場してほしいところです。しかし、2人は米ツアーの試合を選んだ。これは、はっきり言えば日米の試合を天びんにかけたら「日本オープンのほうが出場する価値が低かった」ということです。別の言い方をすると、我々は2人の不参加を責める前に「日本オープンはいろいろな面で『彼らが自ら出場する試合』としての要素を備えているかどうか」を謙虚に顧みなければなりません。

 それは出場資格、日程、会場となるコース、賞金など多岐にわたります。JGAは「全米、全英オープンなどに伍(ご)していけるオープン競技」に衣替えすべく、いろいろな取り組みを進めています(以前のコラムにも書きましたが)。そうした取り組みを進め「日本人選手である以上、日本オープンの優勝カップに名前を刻みたい」と熱望されるような大会にすべきです。世界ランクの上位者が出場するような試合になれば、日本オープンの重さも自然に高まるはずですから。


日本シニアオープンは予選会から勝ち上がった平石が栄冠を手に

■予選会勝ち上がりの平石優勝に意義

 その意味では、今年の日本シニアオープン(10月29日~11月1日)はJGAが目指すオープン競技の一つの形を示せたと思います。会場の白山ヴィレッジGCはリゾートコースです。「リゾートコースは簡単なコース」、つまり「ナショナルオープンなんか開催する場所じゃない」というのがこれまでの考え方でした。しかし、今回はリゾートコースでも十分ナショナルオープンを開けることを実証できたと思います。

 まずコースに全面協力を得て、大小2000本以上の木を伐採しました。さらにテレビ映りが良くなるように枝を落とし、ギャラリーも観戦しやすいように通路を確保しました。それまでの木が茂っていたコースは風通しが良い、明るいコースに生まれ変わりました。ラフも3オープンの中では一番良い状態でしたし、グリーンも硬く仕上がりました。シニアにはちょっと硬くなりすぎた感じもしましたが、その分フェアウエーは広く設定しました。

 優勝は平石武則選手。彼は予選会から勝ち上がっての栄冠です。予選会はより多くの選手に門戸を開いて、オープン競技の名前にふさわしい大会にするというのがJGAの考えです。それだけに予選会から勝ち上がって優勝したということに大きな意味があるのです。

 平石プロには申し訳ありませんが、レギュラー時代は飛ばないことで有名でした。シニアに入ってからも同じです。それが、今年50歳を迎えてシニア入りした飛ばし屋の米山剛選手と競り合って優勝したというのも大会を盛り上げました。

 「やっぱりゴルフは飛ばなきゃだめ。シニアは若い選手の方が絶対有利」というのが常識となっている中、時にはティーショットで60ヤード近く離される平石選手が正確なショットと抜群のパッティングで優勝を手繰り寄せた展開は、「ゴルフはパワーゲームじゃない」ということを立証してくれました。

 来年以降、レギュラー時代に活躍した選手が続々とシニア入りしてきます。ほとんどが一時期、試合に出られない時を経験しているだけに、苦労を重ねて人間的な深みを増しています。スコット選手がジュニアセミナーで強調していた「誰のおかげでゴルフができるのか」を自ら体験した選手ばかりです。それだけ個性豊かで人間的魅力にあふれ、サービス精神旺盛なキャラクターがそろいます。そこには女子の華やかさ、力強さに満ちた男子とはちがった魅力があります。

 また、来年からシニアオープンは9月開催となり、北から南まで全国で開催が可能となり、日照時間も延びるためより多くの選手が出場可能になります。また近い将来は、アジア地区での予選会を開催するなどして、JGAでは、より多くのファンが楽しめて、世界に誇れるシニアオープンにしていきたいと考えています。


公益財団法人ゴルフ協会専務理事 山中博史

日経新聞








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